【雑談】短くまとめてほしい私たち

みなさん、こんにちは!進学塾ライトアップ、代表の西川です。

本日は多くの学校でテストも終わり、教室はかなり静かだったように思います。

本日は、少し気になった記事のご紹介から。その記事を読んで、色々とカルチャーショックを受けました。

現代ビジネスというサイトの中の、稲田さんというフリーライターの方の記事です。

映画は「5分で見る」のが当たり前??

「映画を早送りで観る人たち」の出現が示す、恐ろしい未来

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/81647

最初にこの記事のタイトルを見たときに、ちょっと理解が追いつきませんでした。

映画を早送りで見るって、それって見ていると言えるの??わざわざ見るのにどうして早送りするの??となりました。しかし、動画配信サービス(Amazon PrimeやNetflixなど)を使って、実際に早送りや10秒飛ばしで映画を観ている人が、結構な数いるようです。

少し、この記事から引用してみたいと思います。

そこには、映画を通常の速度では見られなくなったという男性(37歳)の、「倍速にして、会話がないシーンや風景描写は飛ばしています。自分にとって映画はその瞬間の娯楽にすぎないんです」という声が紹介されていた。

(中略)

しかし、本編すべてを1.5倍速で視聴したり、会話がなかったり動きが少なかったりするシーンを頻繁な10秒飛ばしを駆使して視聴する人は、それほど珍しくない。理由は「まだるっこしいから」。若者から中年層まで、筆者の周りにもいる。

(中略)

10代の若者の間で、倍速視聴は以前から当たり前だった。地上波ドラマを「忙しいし、友達の間の話題についていきたいだけなので、録画して倍速で見る」「内容さえわかればいいからざっと見て、細かいところはWikipediaで補足する」等。

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/81647 より引用

おそらく、生徒さんの中にも、保護者の方の中にも、普段からYouTubeやその他の動画を早送り再生している人は、普通にいるんでしょうね。良いことなのか悪いことなのかは分かりませんが、私には想像もつかないことだったので、それをこの記事で知って驚きました。

YouTubeも、再生画面の右上の「…」がタテに並んだところをタッチすると・・・
下から3番目のところで「再生速度」が選べる!

そして、「そういえば、あのときのあれもそういうことだったのか!」と、色々と思い当たることが・・・。

さかた塾中学部時代に、塾に置いてあるマンガを大量に読む生徒がいました。彼の読み方を『読んでいる』とカウントするならば、5分で3冊くらいのマンガを読んでいました。「そんなにパラパラとめくるだけでちゃんと内容理解できてるの?」と聞いたところ、「文字は読まずに絵だけを見てます。それで、だいたいのストーリーを把握して、面白そうだったらちゃんと読みます。」という感想でした。

初見の小説やマンガを読むときというのは、先のストーリーが分からないから、次の展開がどうなるんだろうかとドキドキするものだと思うのです。ですが、パラパラめくって、なんとなく先の展開を知ってしまうと、初見のときに感じる驚きや感動というものが失われてしまうような気がします。だから、その生徒のことは、なんとももったいない読書の仕方をしているな、変わった読み方をする子だなと思っていたのですが、この記事を読む限りでは、彼は決して少数派という訳ではないんでしょうね・・・。

自分が楽しいと思えるものだったら、とことん時間を使うけれど、楽しいと思えないものには、1秒たりとも時間を無駄にしたくない。今の若い子たちに流行っている、そんな「コスパ重視」の考えが、彼にそんな行動をとらせたんだなと、この記事を読んで強く納得出来ました。

映画を早送りで見てしまう、3つの背景

では、なぜそんな風にして映画やドラマを観るのか、稲田さんはその背景として考えられるものを3つ挙げています。以下の3つは、私が独自に考えたものではなく、ライターの稲田さんの見解です。そこに便乗する形で、私からのコメントもつけてみました。

1.「作品が多すぎる」

私が子供のころは、映画を観ると言えば、映画館に足を運ぶか、TSUTAYAでビデオを借りて来て観るか、テレビのロードショーで放送されるのを待つ、という方法しかありませんでした。

しかし、動画配信サービスによって、いつでも好きなときに、大量の映像を見ることが出来ます。当然、周りの友達が見ている作品も多種多様になるでしょう。忙しい中学生にとって、周りの話題についていって、嫌われないように、遅れないようにするためには、早送りしながらでも観て、後でウィキペディアで補足をするのが、一番賢い映画の見方になるんでしょうね。

最近のニュースでも印象的なものがありました。

長編映画まとめた「ファスト映画」を無断で投稿、全国初の逮捕…広告収入目当てか

https://www.yomiuri.co.jp/national/20210623-OYT1T50241/

長編映画を10分程度にまとめた「ファスト映画」を無断で動画投稿サイトに公開したとして、宮城県警は23日、札幌市東区の無職男(25)ら男女3人を著作権法違反の疑いで逮捕した。県警によると、ファスト映画を巡る逮捕は全国で初めて。

(中略)

今月14日時点で計約2100本の投稿があり、約4億7700万回再生されていた。視聴者が本来の映画を見なくなるケースが多く、映画権利者の被害総額は956億円と推定される。

https://www.yomiuri.co.jp/national/20210623-OYT1T50241/ より引用

映画の内容を短い動画にまとめていた人たちが、映画関連の会社の利益を侵害しているため逮捕されたというニュースです。

映画の内容を10分程度にまとめた動画なんて、本当に見る人がいるんだろうか?と疑問に思いましたが、逮捕された人たちの動画が約5億回も再生されているということは、多くの人が見ているんでしょう。上映期間が終わっていて、もう劇場では見られない作品ならまだしも、現在上映中の映画であっても、この「ファスト映画」に頼ってしまう人が多いんですね。そこまでしてわざわざ映画の内容を知りたい人なんているのか・・・と未だに信じられません。それで映画を観た気分になれるんでしょうか?

2.「コスパ・タイパを重視する人が増えた」

ここで言う「コスパ」は「コストパフォーマンス」の略で、「タイパ」は「タイムパフォーマンス」の略です。「やる価値のあるもの」「わざわざ時間をかけても良いもの」が「コスパ」・「タイパ」が良い(高い)もの、ということになります。

先程、マンガを飛ばし読みする生徒さんの話を例として出しましたが、そんな風に自分にとって価値があるかどうかわからないものには、時間をかけたくないけれど、読んだという事実は欲しいんです。ただし、ここでいう「価値」というものは、極めて短期的なものである場合も多いようです。

稲田さんは記事の中で、早送りで映画を観る人々のことを「彼ら」と呼びながら、以下のように分析しています。

彼らは映画やドラマの視聴を、速読のようなものと捉えているのかもしれない。彼らは速読と同じく、訓練によって映像作品を「速く」「効率的に」体験できると考えている(速読が書物の堪能度・理解度を阻害するか、しないかの議論は、ここではしないでおく)。

(中略)

彼らは、「観ておくべき重要作品を、リストにして教えてくれ」と言う。彼らは「近道」を探す。なぜなら、駄作を観ている時間は彼らにとって「無駄」だから。無駄な時間をすごすこと、つまり「コスパが悪い」ことを、とても恐れているから。

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/81647 より引用

後半に出てきた、「リストにして教えてくれ」という話は、ものすごく心当たりがあります。

ネット上で勉強法について質問している人達を見かけることがありますが、「おススメの参考書は何ですか?」「それだけやればいいですか?他には?」という書き込みをよく見かける気がします。実際に本屋に行って、色々な参考書の中身を見比べて、自分の実力や好みに合うかを考える時間も、「もったいない」と考えて、他の人から教えてもらっている訳です。実際に本屋に行く前に質問をして、「お墨付き」をもらったものしか見ない。

もちろん、こういう選び方は、効率よく勉強をするための賢い判断だと思う反面、「自分に合ったものをきちんと自分の目で見て選ぶことも必要じゃないかな?」「誰にも頼れない、自分で選ばなければいけない場面で、この人たちはどうするんだろう?」と、非効率なことをよくやってしまう私は、ちょっと考えてしまいます。

勉強に関係のあるお話しでいくと、ドリヤス工場さんの『〇〇すぎる文学作品をだいたい10ページくらいの漫画で読む。』シリーズは、累計発行部数50万部を突破しており、『世界一受けたい授業』や『東大王』でも紹介された、人気のシリーズです。

http://to-ti.in/product/bungaku10

芥川龍之介の『蜘蛛の糸』や太宰治『人間失格』、森鴎外の『舞姫』、夢野久作の『ドグラマグラ』など、文豪と呼ばれる人たちの作品を10ページくらいのマンガにまとめた作品で、これを読めば、名作とよばれている小説の大体のストーリーが頭の中に入ります。昔の作品は漢字もたくさん、言葉も難しくて、読みたくても読めない・・・。そんな人のための作品であり、これも作品全部を見るよりも、要点を説明してくれた方が効率が良い、というニーズから生まれた作品でしょう。こういったシリーズが人気なのも、今の世の中の風潮を考えると自然なことなのかもしれません。

私もこの本を教室に置いていますし、国語の質問を生徒にされて、ぱっと思い出せないときは、つい頼ってしまったりもします。ですので、非常に便利だし、ありがたいことは分かります。きっと、「ファスト映画」というのも、(違法ですが)そんな時代のニーズとマッチしたことで人気が出たんでしょうね。

3.「すべてをセリフで説明する映像作品が増えた」

本来、映像作品は映像で語るものなのだから、役者が悲しそうな顔をしていれば悲しいことが伝わるし、無言でじっと汗をかいていれば絶体絶命であることがわかる。セリフやモノローグ(独白)で、「悲しい」とか「どうしよう」などと口に出す必要はない。

しかし、昨今の(とくに日本の大衆向け)映像作品には、いま自分が嬉しいのか、悲しいのか、自分がどのような状況に置かれているのかを、一言一句丁寧に、セリフで説明してしまうものが多い。言葉なしの映像だけを観て「読み解く」必要がないのだ。

たとえば、TVアニメシリーズ『鬼滅の刃』の第1話。主人公の炭治郎は、雪の中を走りながら「息が苦しい、凍てついた空気で肺が痛い」と言い、雪深い中で崖から落下すると「助かった、雪で」と言う。しかし、そのセリフは必要だろうか。丁寧に作画されたアニメーション表現と声優の息遣いの芝居によって、そんな状況は説明されなくても、わかる。

(中略)

そういう作品ばかり観て育った人たち、あるいはそういう作品に慣れた人たちが、「セリフのないシーンは、飛ばしても支障ない」「字幕さえ追えば、状況は把握できる」という発想になるのは、当然だ。

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/81647 より引用

この手のお話しのときに、必ずと言っていいほどやり玉にあがるのが、大人気アニメの『鬼滅の刃』です。実際、アマゾンプライムのレビュー欄でも、このような書き込みを見つけました。

Amazon Prime 鬼滅の刃のレビューより引用

もしかしたらこのお話しを拡げると、今の日本人というのは(日本だけではないのかもしれませんが)、周りの空気を読むことが苦手になってきているのかもしれません。

口に出して言ってくれないとわからない、という状態かもしれません。1つ目・2つ目の背景とも重なりますが、とにかく「省きたい」「結論が知りたい」、だからこちらに想像させないでほしい、考えるための余白なんていらない、100%の答えだけが欲しい。

そして、そういう作品の演出を好意的に受け取る人もいれば、押しつけがましくて嫌い、と感じる人もいるようです。

この話と関連したお話しでは、YouTuberやDJ、イベント企画など様々な活動をされている「DJ社長」という方が思い浮かびます。

「レペゼン地球」というグループで音楽活動もされていて、そちらでトラブルがあったような話も最近ニュースになっていました。ちなみに、余談ですがレペゼンというのはrepresentativeという英単語から来た外来語で、「代表者」という意味ですので、「俺たちは全地球を代表して語っているんだ!」というものすごい意気込みを持っているんだと思います。(・・・と、私は勝手に考えています。間違っていたら訂正します。)

この「DJ社長」のYouTubeの動画はものすごく編集されていて、会話と会話の間のちょっとした「間」も消されています。会話が終わったと思ったら、その直後の1秒にも満たない間も切り取られる編集がされていて、0.1秒後には次の会話が始まり、マシンガントークのように続いていきます。だから、この方の動画をちゃんとみたい人は、この方の動画を飛ばそうと思わないし、きっとこの動画を観る多くの方にとっては、すみずみまで楽しめる良い動画なんだろうなと思います。

そして、この動画ですが、個人的にはめちゃくちゃ好きです。DJ社長は、見た目は派手ですが、動画を見ると、私には想像もつかないような苦労をたくさんされた方なんだということが分かります。きっと私が勉強に絡めて話すよりも、このDJ社長が失敗しながらも行動して、考えて考えて考え抜いたことの方が、生徒の皆さんの心にも響くはずです。動画の9分あたりから、勉強に関係するお話も始まりますので、良かったら最初の10分くらい観てみてください。31分あたりにも「夢を追いかける」素敵なお話しがあります。

・・・ということで、お話しを戻しますと、とにかくみんな「間」が嫌い、何もしていないのが嫌い。

だから、お風呂やトイレにまでスマホやタブレットを持ち込もうとします。通勤時間を無駄にしたくないから、歩きながらでも運転しながらでも本の内容が頭に入る「オーディオブック」(ビジネス書など大人向けの本を朗読してくれるサービス)が流行ります。そして、そんな時代の流れの中で、「映画を早送り・10秒飛ばしで観る」という行為も、当たり前になりつつあるんだろうということです。

そんな時代の中で、私自身も何か変えなければいけないところもあるんじゃないか。よく考えたいと思います。

このライターの方の記事が気になった方は・・・

こちらの記事には、小さくない反響があったようで、シリーズ化されており、続編ではさらに色々な切り口からお話しが語られていて面白いです。1つ1つがかなり読み応えがあるため、全部1から読もうとせずに、気になったタイトルから見てみても良いかと思います。

(第1弾)映画やドラマを観て「わかんなかった」という感想が増えた理由

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/83647

(第2弾)『逃げ恥』『シン・エヴァ』…「リテラシーが低い人を差別しない」作品が時代を制する

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/83706

(第3弾)「オタク」になりたい若者たち。倍速でも映画やドラマの「本数をこなす」理由

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/83898

(第4弾)失敗したくない若者たち。映画も倍速試聴する「タイパ至上主義」の裏にあるもの

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/84099

(第5弾)若者のあいだで「批評」と「スポーツ観戦」が不人気な理由

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/84368

(第6弾)「インターネット=社会」若者の間で広がる「セカイ系」の世界観

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/84364

さらに、こちらの記事に対して、ネット上では色々と批評を展開されている方もいらっしゃいますが、これ以上リンクを貼りすぎても、これはいったい誰の何の記事なんだ?状態になりますので、割愛します。

個人的には、第5弾が面白かったです。

自分が好きな作品に対する、否定的な意見は一切聞きたくない、100%肯定の意見だけを見ていたい。気持ちは分からなくはないですが、たまには悪い意見も見てみるのも、「そんな風に考える人もいるんだ!」と新しい発見があるように思うんですけどね。

今はスポーツ観戦も不人気・・・。応援していたチームが負けるとガッカリするし、今まで観ていた時間がもったいない。勝ったときの結果だけ、ハイライトだけ知りたいとなっているようです。このような風潮が続けば、ボールが常に動いているサッカー・バスケ・バレー・卓球などならまだしも、画面があまり変わり映えのしないマラソンなどの長距離走や、間がたくさんある野球などの競技は、どんどん人気が落ちていくかもしれません。カーリングみたいに間はあっても、「もぐもぐタイム」があるなら大丈夫なのかもしれませんが。笑

もし興味があれば、ネット上で色々と世の中のことをあれこれ考えている方の記事を見つけて、それを基に自分で考えてみるのもいいかもしれません。ぜひ、自分のアタマで、世の中の事を考えてみましょう!

何かこの記事の事で、私と話したいことなどあれば、ぜひ教室で話しましょう!

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