【ニュースで知ろう】はだしのゲン教材から削除問題

みなさん、こんにちは!進学塾ライトアップ、代表の西川です。

さて、久しぶりにニュースを取り上げてみたいと思います!

先日、このようなニュースを目にしました。

「『はだしのゲン』教材から削除」で大論争 小銭稼ぎ、鯉泥棒の描写が「今の実態にそぐわない」に「当たり前じゃん」

広島市の市立小学校で、平和教育の教材として使われている漫画『はだしのゲン』。しかし、4月から使われる教材では削除されることが、広島市の教育委員会で決まった。

このニュースにはとてもビックリしました。原爆の落とされ焼け野原となったヒロシマの街を舞台に、原爆で家族を失った主人公のゲンが力強く生きていく姿を描いた、作者の中沢啓治さんの自伝的な漫画です。

今の小学生や中学生の皆さんは『はだしのゲン』を読んだことありますか?

私が『はだしのゲン』と初めて出会ったと記憶しているのは、小学校の移動図書館でした。月1回やってくるワゴン車のいっぱいに並んだ本の中に『はだしのゲン』があって、何度か借りていました。ゲンが校門前で近所のおばさんと話をしていたところ、ゲンは校門が爆風をさえぎってくれたことでなんとか直撃は免れたものの、目の前にいたおばさんが焼け死んでいた描写。ゲンの家族が崩れた家の下敷きになって焼け焦げていく描写や、ただれた皮膚の描写、放射線の影響で髪の毛が抜け落ちていく描写、そして、どんな場面だったか正確には覚えていないのですが、拷問を受けて爪をはがされた人の描写などもありましたね・・・。小学生ながらにものすごく心にダメージを負ったような気がします。「さよなら三角、またきて四角、四角は豆腐、豆腐は白い、白いはうさぎ、うさぎははねる、はねるはかえる・・・」という謎の連想ゲームのような歌をゲンがよく歌っていたのも印象に残っています。

教育委員会で問題とされたのは、主人公が街角で浪曲のまねごとをして小銭を稼ぐ場面と、栄養失調の母親に食べさせるために、池の鯉を盗む場面。なぜこういう状況になったのか、じっくりと理解して考えさせるためには時間が足りない――として、削除することになったという。

(中略)

広島市教育委員会は、今回の決定について「作品自体を否定することではない」としているが、この作品に関しては、以前からさまざまな論争が起きている。

記事によると、教材から削除された理由は上記の通りでした。

つまり、『はだしのゲン』で扱っている題材は、貧しさのために「盗み」を働いてしまうゲンの様子などをきちんと小学生に理解させるためには、教える時間が足りないからというのが理由の一つのようです。

私がこのニュースを最初に読んだときにまず思い浮かんだのは、過去にはだしのゲンが「有害図書」のようなものに指定されてしまったというお話でした。性的な描写や残酷な描写が多い本は、子供にふさわしくないということで有害図書に指定され、図書館から撤去されることがあります。

実際、2014年には大阪府泉佐野市で小中学校の図書室から『はだしのゲン』が撤去される事態が起きました。その後、校長たちの反発によって、『はだしのゲン』は再び学校の本棚に戻されることになりましたが、戦争の悲惨さを正面から伝えてくれる作品をそんな風に扱うなんて・・・と、当時の私は衝撃を受けた記憶があります。

ただ、その言い分も、今となってはある程度理解出来る気もします。

確かに『はだしのゲン』には、子供には真似をしてほしくないような差別用語が用いられている部分があったり、天皇の戦争責任について触れていたりするような部分があったり、今回の話題にも上がっているように主人公が犯罪を犯す場面もあったり、読む人が読めば過激な作品であるようです。

だからこそ、当時の時代背景や何が問題をなっているのかを、きちんと時間をかけてゆっくりと伝える必要があるのだと思います。それを学校でやるべきなのか、家庭でやるべきなのかは意見が分かれるところでしょうか。

今は、何かまずいと思われることがあれば、すぐさま誰かに取り上げられて、炎上してしまうような時代です。学校という場所は、特定の思想にかたよった教育をするべきではないとされている場所ですから、戦中・戦後の激動の時代をそのまま切り取った漫画である『はだしのゲン』を、学校側が少しずつ扱うのが難しくなってきているのではないかと思います。

ということで、私は今回の小学校の平和教育の教材から『はだしのゲン』が削除された問題に関しては、戦争について、学校の先生が小学生たちに伝えやすい教材でしっかりと伝えてもらうことが一番だと思うので、削除を賛成するのはちょっと寂しい気もするけれど、反対も出来ないかな・・・といった立場です。

ちなみに、小学校で行われている「平和教育」について・・・。私も小学校のとき、調べ学習をしたり、戦争の映画を見たりしたことで強烈に印象に残っていますが、他の都道府県の小学校では、普通は行われていないものなんです。これは、私が東京にいたころに生徒たちに聞いて確認済みです。さらに驚いたのは、今の東京の子供たちって「原爆が落とされた日」を知らない子が大半なんですよね。広島の子供たちは、平和教育を受けて、当たり前のように毎年戦争について学習をしているので、そんなことはないはずです。

戦争が終わってもうすぐ80年になろうとしています。戦争を実際に体験した人が身近にいなくなって、8月に入るとテレビでしきりに放送される戦争を題材にしたドラマも、テレビ離れをした子供たちは見向きもしなくなって・・・、そんな時代だからこそ、平和教育を受けた広島出身の私たちが、同世代の戦争のことを知らない他県の友達に、戦争についてきちんと伝えていかなければならないのだろうと思います。だから、平和教育は広島県独自の教育として、ぜひ今後も続けてほしいですね。

私も、『はだしのゲン』は教室にいつか置きたいなと思っています。生の戦争体験、目の前で人が死ぬ経験をした人でなければ分からない感情が絶対にあって、その気持ち悪さみたいなものが、きっと反戦の気持ちにつながると思っています。現在、核兵器が戦争で使われた国は日本だけですが、もしかしたら今後ウクライナでも使われることになるかもしれません。その核兵器の恐ろしさを他の国の人たちに伝えるのは、私たちにしか出来ないことなのかもしれません。

このブログを書いている間に、今度は「第五福竜丸」を平和教育の教材から削除するという話題も挙がっていましたね。水爆実験によって放射能の被害を受けたマグロ漁船の話ですが、これも小学校の平和学習で別の学年が発表していたのが印象に残っています。

ということで、ぜひ戦争を体験したことのない私たちが、同世代や次の世代へと戦争をどのように伝えていくのかについて、もしよければ家族ででも、他県の友達とでも、機会があれば話してみてください!

よろしければ、私が過去に書いた、2019年にリニューアルされた原爆資料館のお話も見てみてください!

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