【読書レビュー】大久保圭『アルテ』

みなさん、こんにちは!進学塾ライトアップ、代表の西川です。

定期テスト結果の最終報告を本日お伝えする予定でしたが、中2であと1名だけ、未報告がおりますので、もうしばらくお待ちください。

ということで、本日も、教室にある漫画をご紹介してみたいと思います。今回の作品は、2020年にアニメ化もされている、16世紀のイタリアのフィレンツェが舞台の作品です。

アルテ – 大久保圭 / 第1話 弟子入り志願 | ゼノン編集部 (comic-zenon.com)

16世紀初頭・フィレンツェ。芸術など文化活動が花開いたルネサンス発祥の地。 そんな活気あふれる華やかなる時代に、貴族家生まれのアルテが画家工房への弟子入りを志願する。 女性がひとりで生きて行くことに理解のなかった時代、様々な困難がアルテを待ち受ける。

アルテ – 大久保圭 / 第1話 弟子入り志願 | ゼノン編集部 (comic-zenon.com) より引用

アニメ版のサイトはこちらです。

TVアニメ「アルテ」公式サイト (arte-anime.com)

このころのヨーロッパと言えば、「大航海時代」「ルネサンス」「宗教改革」など、色々な単語が思い浮かんでほしいです。

中2は室町時代の歴史を勉強し終わると、「中世ヨーロッパ」を勉強することになります。また、尾道市の中2の国語の教科書には、「君は『最後の晩餐』を知っているか」という作品が登場します。そこで登場するのが、16世紀ごろのイタリアを中心に起こった「ルネサンス(文芸復興)」です。

ルネサンスについて、良く出る記述問題を確認しよう!

この範囲が社会の試験範囲になっている生徒さんたちは、ルネサンスに関して、きちんと記述問題でも説明できなければいけません。

なぜ、「ルネサンス」が起こったのか、11世紀末ごろから起こったある出来事と関連付けて書きなさい。

さあ、この問題に記述で解答するなら、なんと答えますか?

・・・正解となる説明に必要なキーワードは、「十字軍」ですね。1096年から、キリスト教カトリックのローマ教皇の呼びかけによって集まった兵士たちが、聖地エルサレムをイスラム教から取り戻すために、軍隊を組織して、イスラム教の世界へと派遣されました。それが十字軍でしたよね。

そして、その十字軍は結果としては大失敗に終わるのですが、ヨーロッパの人々をイスラム教の地域へと派遣した結果、どんな影響が表れたでしょうか。・・・わかりましたか?ヨーロッパで忘れられていた、古代ギリシアや古代ローマの文化を思い出すことにつながったんですよね。「あの頃は良かったよな・・・」という、昔を懐かしく思う気持ちが原動力となって、昔の文化を復活させようという、「ルネサンス」が花開きました。

自分たちは忘れていたはずの文化が、周辺地域に残っている、このヨーロッパの事例と似たようなことは、日本にもありました。江戸時代の文化が、明治時代の文明開化で欧米の文化へと移り変わっていくことによって、一時的に価値の低いものとされました。しかし、浮世絵が海外のアーティストには高く評価され、日本の芸術はヨーロッパの人々に色々な影響を与えました。それはJapanをもじって「Japonism(ジャポニズム)」とも呼ばれています。興味があれば、ぜひ調べてみてください!

このように、元の国にはほとんど残っていない文化が、別の国では、大事に残されていたりすることもあります。十字軍の派遣によって、イスラム教の世界に残っていた古代の文化を見直す動きが起こった。それが「ルネサンス(文芸復興)」ということは、教科書にもバッチリ書かれています。答えられなかった人は、ぜひ教科書をチェックしておきましょう!

自分の道を自分で切り開くことを選んだアルテ

さて、マンガのお話に戻しましょう。当時、イタリアの貴族の女性たちは、結婚をするときに、結婚相手の男性の家に、「持参金」という形でお金を納めます。この額が多くなければ、良い男性、良い家柄の貴族を選べないんだそうです。

主人公である15歳の少女アルテの家は、貴族ではあるものの、決して裕福ではない。だから、アルテがまともな生活を送ろうと思えば、「持参金が少なくても、君が素敵だから結婚したい!」という男性を見つけるか、出家をして教会で「修道女」としての人生を送るか、のどちらかしかありませんでした。そのはずでした。

『アルテ ①』p.10より引用
『アルテ ①』p.11より引用

そこで、アルテが決めたのは、そのどちらでもない第三の選択肢、「画家になる」こと。しかし、当時の画家は男性ばかりで、アルテは、「女だから」という理由で、画家工房に弟子入りを志願するも、門前払いされてしまいます。

『アルテ ①』p.16より引用

そんな彼女の作品そのものや、彼女の努力する姿勢を評価してくれる親方が現れ、なんとか「画家見習い」としての生活をスタートさせたアルテ。色々な人と出会い、色々な事件に巻き込まれながら、彼女が少しずつ成長していくお話です。

『アルテ ①』p.50より引用

もちろん、女性が差別と戦う話として、読んでも面白いと思うし、当時のヨーロッパの様子を知るためにもおススメしたいのですが、それ以上に、情熱と努力で困難を乗り越えていくアルテの姿勢は、きっとみなさんも応援したくなるのではないかと思います。

お話が進んでいくと、フィレンツェから、水の都ヴェネチアへとお話の舞台が移ったり、高校の世界史でも登場するような超有名貴族の肖像画を描くお仕事を請け負ったり、また色々な政治的なものに巻き込まれて彼女の夢が遠のいてしまったりするのですが、中でも私が興味深く読んだのは、第7巻です。

ヴェネチアに移ったアルテは、自分が「貴族出身の女」だからこそ、得られた仕事があることに気づきます。今まで自分は、「女だから」という理由で仕事が得られなかったり、ケチをつけられたりしていたと思っていたのに、それが有利に働いてしまったことに後ろめたさを感じます。

『アルテ ⑦』p.85より引用
『アルテ ⑦』p.86より引用

そしてアルテは、自分に与えられた今回の仕事は、「自分の能力」で勝ち取ったものではなく、「貴族出身の女」だから得られた仕事。そんな仕事を本当に自分なんかがやってもいいものか・・・と、自信を失ってしまいます。

みなさんにも将来、もしかしたらそんな経験が訪れるかもしれません。自分が他の人よりも恵まれていたと気づいて、自分なんかよりも、頑張っている他の人が報われてほしいと思ってしまったり、自分が恵まれていることを申し訳ないと思ったり・・・。

アルテはそこで、「後ろめたさ」を忘れるために、体調を崩すまで努力をしようとして、体を壊してしまいます。そんな失敗をしてしまった彼女は、周りの人の助言もあり、大切なことに気づいていきます。

「他人にうらやましい」と思われたり、「他人をうらやましい」と思っても、それは変えられるものではない。そんなのものは考えるだけ無駄。それなら、自分らしさをもっと磨いて、自分にしか出来ない仕事をやればいい。

自分が出来ないことを周りのせいにしたり、逆に、全ては周りのおかげで自分には価値がないと考えたり、みんなそれぞれが色々とネガティブなことを考えてしまうことだってあります。

ですが、この『アルテ』を読むと、今自分に出来ることを一生懸命に頑張ることの大切さを教えてくれます。高い壁があったとしても、今の自分がどうすればその壁を乗り越えられるのかを試行錯誤するアルテの姿勢は、きっと読んだ皆さんにも、良い影響を与えてくれるはずです。

今回は1巻と7巻を中心にお話をしましたが、現在14巻まで出されており、これ以外にもみなさんにご紹介したいエピソードはたくさんあります。ぜひ、みなさんも教室にあるこのマンガを直接手に取って、勉強時間の合間に読んでみてください!

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