【読書レビュー】『文豪ストレイドッグス』&『人間失格』

みなさん、こんにちは!進学塾ライトアップ、代表の西川です。

5/3まではお休みをいただいております。5/4,5は朝10時から教室を開けますので、よろしくお願いいたします。

本日は、改行の仕方を少し変えて、以前のものに戻してみます。

生徒さんにおススメのマンガを聞いたときに、時々名前が上がる『文豪ストレイドッグス』という作品。こちらが気になって、お休みのこの時期を利用して、ブック〇フで110円のものを購入し、少しだけ読んでみました。

https://promo.kadokawa.co.jp/bungo/

国語や社会の歴史で登場する文豪たちが、特殊能力を持った美男美女になり、「武装探偵社」というチームになって、ギャングたちと戦っていく作品です。一部では、故人を利用して・・・とか、原作ちゃんと読んでんのか!・・・と批判もあるようですが、私はアリだと思いました。

好きこそものの上手なれ

東京で塾に努めていたころ、うちの教室から1名だけ早稲田大学の合格者を出したことがあるのですが、彼の得意教科は世界史。センター試験の世界史は満点。模試では偏差値70とか80を毎回たたき出していました。

そんな彼も、ヴィシュヌだとかシヴァだとか、ガネーシャだとか、古代の神様の名前は「パズドラ」というゲームで覚えたと言っていました。

数年前のセンター試験、英語のリスニングで登場した、「skyscraper(超高層ビル)」という単語は、カードゲーム遊戯王に実際にあるカードだそうで、入試の直後は「遊戯王やっといてよかった!」というコメントがSNSに多発・・・

特に大学受験がそうですが、単純に勉強時間が多いだけで、本当にその科目を得意教科に出来るのかな?と思っています。(もちろん、勉強時間が多いことが大前提ですが。)

実際、私は高校日本史が得意でしたが、大学に入って半年もすれば、全く思い出せなくなっていた自分に絶望しました。あれだけやったのに・・・。きっと日本史が大好きで、司馬遼太郎の本を読み漁って・・・という高校生には、普通に勝てないだろうなと思っています。

他にも、物理好きなアルバイトの学生さんに、宇宙について語ってもらおうとすると、「2~3時間、本気だせば半日語れますけどいいですか?笑」とわれました。

そう考えると、好きなものがあるというのは本当に大切で、入口はマンガであっても、うちの生徒さんたちが、太宰治だとか芥川龍之介だとか、谷崎潤一郎(!?)だとかに興味を持って、手に取って読もうとしているのを見ると、『文スト』(略し方合ってる?笑)の影響はすごいと思います。

『文スト』メインキャラとその能力

現在20巻まで発売されているコミックのうち、私はまだ3巻までしか読んでいないのですが、登場人物たちの性格とか特殊能力を私が分かる範囲で紹介し、読者増に貢献したいと思います。

主人公が「中島敦」。高校生の教科書によく載っている、あの『山月記』の作者の中島です。

「隴西(ろうせい)の李徴(りちょう)は博学才頴(はくがくさいえい)、天宝の末年、若くして名を虎榜(こぼう)に連ね・・・」

高1の頃、基本的に何を言っているのか分からないこの『山月記』の冒頭部分を暗唱させられました。そして、文章を辞書を引きながら苦労して読んでいった記憶がよみがえりました。

『山月記』は、プライドが高かった李徴が、そのプライドのせいで虎に変身してしまい、かつての友人と再開して、自分の心情を打ち明けるお話でしたが、『文スト』の中島敦の能力は、「月下獣(げっかじゅう)」という虎になる能力・・・そのまんま笑

その中島を助けるのが、突然川を流れてきた謎の男。・・・ということで、これが太宰治です笑 現実の太宰は、何度か恋人と水路に飛び込んで、入水自殺を図っていますので、作中の太宰も、美しい女性を見ると「一緒に心中しない?」と話しかける始末。そして、そんな太宰の特殊能力が、相手の能力を無力化する「人間失格」!技の名前が小説のタイトルそのまんま!笑

この他にも、「武装探偵社」というチームには、国木田独歩、与謝野晶子、谷崎潤一郎、福沢諭吉、江戸川乱歩、宮沢賢治・・・と、文豪たちがたくさん登場!戦っているギャングのボスは、芥川龍之介、その部下が樋口一葉、中原中也、梶井基次郎、泉鏡花・・・とこちらにも知っている名前が次々と・・・!

そして、3巻の終わりには、数々の事件の黒幕として、登場する文豪たちがまたすごい・・・!全てのミステリーのトリックはすでに彼女が書いている、とまで言われた「ミステリーの女王」のアガサ・クリスティー、そしてロシアの文豪ドストエフスキー、アメリカの文豪フィッツジェラルドと、世界の文豪たちが登場!ネームバリューもすごいと思いますし、彼らの特殊能力がどんなものなのかも気になる・・・!

他にも、『暗夜行路』の志賀直哉とか『吾輩は猫である』の夏目漱石とか、『蟹工船』の小林多喜二とか、『舞姫』森鴎外とかが登場するんじゃないかな・・・、もしかしたら明治よりも前の、『南総里見八犬伝』の滝沢馬琴とか、『源氏物語』の紫式部とか、『法上記』の鴨長明とかが現れたりして・・・と考えたり、海外の文豪だとだと『ペスト』のカミュとか、『老人と海』のヘミングウェイとか、『ライ麦畑でつかまえて』のサリンジャーとか、シャーロックホームズシリーズのコナン・ドイルとかが、登場するんじゃないかな・・・と想像するとなかなか楽しかったです。江戸川乱歩とコナン・ドイルが共闘すれば、まさに名探偵コナンの世界だな、なんて考えたり、有名どころの文豪を思い出して想像するだけでもテンションが上がりました。

これを機に、小説に手を出してほしい!

このマンガを読んだり、アニメ版を見たりして、そこから登場人物たちの文学作品に手を出す中学生たちが増えれば、それはものすごいことですよね。ただ、古い文学作品は、時代背景も違うし、言葉も今は使わないものも多い、なんなら送り仮名や仮名遣いが違うため、私からしても読みにくいものも多いです。そこですぐに挫折して、また小説を読まなくなってしまうなら、それはもったいないなと思っています。

ですので、もし文豪たちの作品が読みづらければ、そっと棚にしまっておいて、あさのあつことか山田悠介とか重松清とか伊坂幸太郎とか、村山由佳とか石田衣良とか湊かなえとか辻村深月とか相沢沙呼とか、それ以外にライトノベルや、人気マンガの小説版などでも構わないので、ぜひ文章を読むことを続けてほしいと思っています。

蛇足:『人間失格』より

最後にちょっとだけ横道に逸れたお話を。太宰治の『人間失格』は、私も数年前に読みました。大学にも行かずダラダラしている学生生活は、自分も少しだけ思い当たる節があるなと思って共感しつつも、結局主人公のことは好きにはなれませんでした。どうしようもない自分を愛してくれた純粋な人が、襲われているのに助けもせずに、汚らわしいもののように見てしまうあの態度はちょっと・・・。人間の心の奥底を描いているか・・・うーん、そんな変な人ばかりじゃないと思うなあ、といった感想でした。

ただ、その問題のシーンの直前に、主人公とその友人がしているゲームは、知的で少し面白いと思ったので、青空文庫から引用をして、ご紹介をしたいと思います。

(文豪ストレイドッグスに登場する人物たちの作品は、著作権が切れているものが多いため、著作権切れの作品を集めた青空文庫というサイトで、無料で読めます。スマホ用のアプリもありますので、移動中でも読めます。ただし、注などがついていないので、意味が分からないものは自分で調べなければいけない点は了承した上で、興味があればサイトを見てみてください。)

一つ目は、喜劇名詞・悲劇名詞の当てっこゲームです。ある言葉を言って、それが楽しい意味(喜劇名詞・コメ)なのか、悲しい意味(悲劇名詞・トラ)なのかを、ああだこうだと議論するゲームです。

 自分たちはその時、喜劇名詞、悲劇名詞の当てっこをはじめました。これは、自分の発明した遊戯で、名詞には(中略)、喜劇名詞、悲劇名詞の区別があって然るべきだ、たとえば、汽船と汽車はいずれも悲劇名詞で、市電とバスは、いずれも喜劇名詞、なぜそうなのか、それのわからぬ者は芸術を談ずるに足らん、喜劇に一個でも悲劇名詞をさしはさんでいる劇作家は、既にそれだけで落第、悲劇の場合もまた然り、といったようなわけなのでした。

太宰治『人間失格』(青空文庫 https://www.aozora.gr.jp/cards/000035/files/301_14912.html より引用)

当時の人たちには、テレビもラジオも、スマホだって当然ありませんから、体を動かす遊び以外だと、こんな風に言葉遊びを楽しんでいたんだなと思うと、とても興味深いです。

「いいかい? 煙草は?」

と自分が問います。

「トラ。(悲劇・トラジディの略)

と堀木が言下に答えます。

「薬は?」

「粉薬かい?丸薬かい?」

「注射」

「トラ」

(中略)

「しかし、君、薬や医者はね、あれで案外、コメ(喜劇・コメディの略)なんだぜ。死は?」

「コメ。牧師も和尚も然りじゃね」

「大出来。そうして、生はトラだなあ」

「ちがう。それも、コメ」

「いや、それでは、何でもかでも皆コメになってしまう。」

太宰治『人間失格』(青空文庫 https://www.aozora.gr.jp/cards/000035/files/301_14912.html より引用)

死は喜劇だ、生は悲劇だ、いや生も喜劇だ、などというこの2人の会話は、なんともひねくれていると思うのですが、こうやってその言葉が物語や小説で、プラスの意味を持っているのか、マイナスの意味を持っているのかを考えるのは、面白いですよね。

「塾」っていう言葉は、コメなんだろうかトラなんだろうか・・・。けっこうトラな人も多いんだろうなあ苦笑

そしてもう一つの遊びが、少し似ていますが、「シノニム・アントニム」ゲームです。ある言葉の類義語(同義語)・対義語を当てるゲームですが、これも、ひねくれた二人のセンスは独特・・・。

またもう一つ、これに似た遊戯を当時、自分は発明していました。それは、対義語アントニムの当てっこでした。黒のアント(対義語アントニムの略)は、白。けれども、白のアントは、赤。赤のアントは、黒。

「花のアントは?」

 と自分が問うと、堀木は口を曲げて考え、

「ええっと、花月という料理屋があったから、月だ」

「いや、それはアントになっていない。むしろ、同義語シノニムだ。星とすみれだって、シノニムじゃないか。アントでない」

(中略)

「なおいけない。花のアントはね、……およそこの世で最も花らしくないもの、それをこそ挙げるべきだ」

「だから、その、……待てよ、なあんだ、女か」

「ついでに、女のシノニムは?」

「臓物」

「君は、どうも、ポエジイを知らんね。」

太宰治『人間失格』(青空文庫 https://www.aozora.gr.jp/cards/000035/files/301_14912.html より引用)

花の対義語は女、女の同義語は臓物・・・

太宰治にとっては、女性は醜いものに見えていたんでしょうかね?女性と深く愛し合う中で、何かどす黒いものを感じたのかもしれませんし、『人間失格』は、太宰の自伝的小説とは言われながらもフィクションですから、誰かの言葉を借りているだけかもしれません。

生徒の皆さんにも、「死は喜劇だと思え」とか、「女性は臓物だ」とか、そんな変なことは考えなくても良いです!笑

ですので、ちょっとだけ考えをひねくれさせて、「YouTubeはトラ」(みんなの時間を奪うから)とか、「学校はトラだけど、トラすぎて逆にコメ」(大変だけど、後から考えるとその窮屈さが逆に面白かった)とか、「勉強のシノニムは遊び」(ハマると楽しいから)とか、「勉強のアントは課題」(自分からやるものとやらされるもの)とか、そんな風に言葉遊びを楽しんでもらえたらと思っています。

ということで、お休み中に私が読んだ本のお話でした。色々と課題作りや、教材研究のストックもしっかりとしておきたいと思っています。宿題の〇つけや、課題作りもしておきたいと思っています。みなさんも、有意義なゴールデンウィークを!

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