【読書レビュー】トマトスープ『天幕のジャードゥーガル』
みなさん、こんにちは!進学塾ライトアップ、代表の西川です。
7/25土, 26日はお休みです。21~24は14時から、7/27月~8/3月は10時から教室を開けます。(※8/1土は私用のため14時からです。)
さて、これまでにアニメ『日本三國』について、色々とコメントをさせてもらいましたが、その流れを受けて、今月から新たに始まったアニメについて、またあれこれと語ってみたいと思います。
みなさんは、2026年7月から放送が始まったTVアニメ『天幕のジャードゥーガル』(原作:トマトスープ/アニメーション制作:サイエンスSARU)という作品をご存じでしょうか?(アニメの公式HPはこちら)(電子版なら無料で読める原作第1巻はこちら)

HP上で公開されているあらすじはこちらです。
少女と妃。復讐の絆で結ばれた二人が、地上最強の帝国に嵐を起こす。
母を亡くし、故郷からも遠く引き離された幼い少女・シタラは、学者一家の心優しい奥方・ファーティマに拾われる。
「勉強して賢くなれば、どんなに困ったことが起きたって何をすれば一番いいのかわかるんだ」ファーティマの息子・ムハンマドの言葉に心を揺さぶられたシタラ、”知”の可能性と大切さを知り、教養を深めていく。いつの日にか、ムハンマドに追いつくことを夢見て……。その頃、皇帝チンギス・カンによる地上最強の「モンゴル帝国」が日に日に勢力を拡大していた。その歴史のうねりは、ついにシタラの住む街をも巻き込んでいく。
帝国の第四皇子トルイによってすべてを奪われ捕虜となったシタラは、ただ一つ残った“知恵”を駆使して王族に取り入り、帝国を内側から崩壊させようと決意する。
奥方から受け継いだ”ファーティマ”を名乗って。心に復讐の炎を宿しつつ、表向きは帝国に仕える身となったシタラはある日、第三皇子オゴタイの第六妃ドレゲネと運命的な出逢いを果たす。彼女もまた壮絶な過去を抱え、心の内に帝国への深い恨みを秘めていた。
シタラとドレゲネ。出逢うはずのなかった二人が手を取り合うとき、運命が大きく動き始める。
現在4話まで放送されていますが、毎話その映像美と重厚なストーリーに圧倒され、すっかりハマってしまいました。
物語の舞台は13世紀。主人公は、とあるイスラムの街で暮らす奴隷の少女「シタラ」(現地の言葉で『星』)です。彼女はモンゴル帝国によって大切な存在と街を奪われ、その「知恵と科学の力」を武器にモンゴル帝国の後宮へ入り込み、復讐を果たそうとします。
この作品を見ていて特に感動するのが、当時のイスラム世界やモンゴル帝国の文化が、史実に基づいて驚くほど忠実に再現されている点です。専門の研究者がしっかりと考証に関わっているからこそのリアルさがあります。
総監督を務める山田尚子さんといえば、アニメ『平家物語』でも琵琶法師が節をつけて歌う場面など、当時の空気感を完璧に描き出していたのが印象的でしたし、『聲の形』では聴覚障碍者に対するいじめという重いテーマを題材にした素晴らしいアニメ映画でした。今作『天幕のジャードゥーガル』でも、その緻密な時代描写と美しい演出が遺憾なく発揮されているように思います。
今回は、アニメ4話まで観て特に印象に残った「歴史の面白いポイント」を、中学生にも分かりやすいように少し深掘りして紹介したいと思います!
1. 私たちのイメージを覆す「イスラム世界の奴隷」
「奴隷」と聞くと、多くの人は「自由がなく、ひたすら酷い労働をさせられる人々」を思い浮かべるのではないでしょうか。近代アメリカに連れていかれた黒人奴隷のようなイメージです。
しかし、中世のイスラム世界における奴隷は、私たちが想像する身分制度とはかなり違っていました。
- 信仰の自由や結婚が認められていた
- ヨーロッパから連れてこられた白人の奴隷もいた
- 実力次第で国の最高権力者(大臣・宰相)にまで上り詰めることができた
実際、歴史上でも奴隷出身の軍人や官僚が力を持ち、政権を握った例(オスマン帝国やマムルーク朝など)がたくさんあります。「奴隷=ただ虐げられる存在」ではない当時のシステムを知ると、アニメの中での立ち位置や人間関係の面白さがより深く理解できるようになります。
2. 生活の知恵と、当時世界最高峰だった「非西洋の科学」
作中に登場する、当時の人々の暮らしや知恵の描写も実に魅力的です。
- ゲルの天井で作る「日時計」 モンゴルの遊牧民たちが使う移動式テント(ゲル)には、天井に丸い穴(天窓)があります。そこから差し込む太陽の光が部屋のどこを照らしているかによって、時間を把握していたそうです。暮らしの中に根付いた見事な生活の知恵ですよね。
- 指先を染める赤い塗料(ヘナ)と高い科学技術 女性たちが結婚式などで指先を赤く染める植物性の塗料(ヘナ)や、医学・天文学といった学問の描写も目を引きます。実は当時、キリスト教中心だった西洋(ヨーロッパ)よりも、イスラム世界の方がはるかに科学や医学が進んでいました。シタラが授かった「知恵」がどれほど強力な武器になるのかが伝わってきます。
3. 「従えば味方、逆らえば全滅」モンゴル帝国の恐ろしいアメとムチ
モンゴル帝国がなぜこれほど急速に世界最大の帝国となれたのか。その秘密である「冷酷な戦略」も作中でしっかり描かれています。
彼らは、自分たちに従属した国には命や安全を保証し、属国として守る「アメ」を用意していました。しかしその反面、少しでも抵抗した街に対しては、人間だけでなく家畜などの動物に至るまで容赦なく全滅させるという徹底した「ムチ」を振るいました。この恐怖政治が、周囲の国々を戦わずして降伏させていったのです。
メディアが繋がると、世界の「解像度」が一気に上がる!
こうした歴史の知識は、私が日頃から愛聴している歴史ポッドキャスト番組『コテンラジオ』で聞いた話ともたくさん繋がっていて、「あ!あの時の話はこれのことか!」とパズルがハマるような快感がありました。
コテンラジオには、まさにチンギスカン(チンギスハンのこと)の回とオスマン帝国の回があるのですが、それらがまさに今回のアニメとつながる部分です。中学生のみなさんにとっては、なじみの薄い国なので、聞いていてもなかなか頭に残らないかもしれませんが、逆にアニメを観てからだと、深井さんたちの話がすんなりと頭に入ってくるかもしれません。
また、コテンラジオのモンゴル帝国の描写に関しては、マンガ『キングダム』の伍長、百人将、千人将・・・といった階級の話とも関連しているので、そのあたりともつなげて読むと分かりやすいかもしれません。
高校時代、世界史の先生から「とにかく世界史が得意になるためには、映画や映像作品をたくさん見ろ」と言われていました。私は寮生だったので、寮の中では見たくても見れないし、そもそも勉強時間を削って映画を見るということに抵抗がありました。ですが、素直に話を聞けばよかったと今になるとその意味が本当によく分かります。文字だけでは想像しにくい歴史も、映像や物語を通して見ることで一気にリアルなものとして体験できるからです。
「百聞は一見に如かず」、文字や写真や絵からの想像だけでは決して得られない情報がそこには詰まっています。
個人的には、ジャンルにこだわらず色々なメディアに触れてみるのがおすすめです。
例えば、発展途上国と言われる国の抱える問題や現地の人のリアルな生活について知りたければ、ABEMAの『国境デスロード』や『世界の果てにひろゆき置いてきた』などはとても参考になると思います。
それ以外にも、今回紹介したようなアニメ作品や、NHKの大河ドラマ、世界の果てまでイッテQのようなバラエティ番組なども、理解を助けてくれると思います。自分の興味が持てるものであれば何でもOK!一つ作品を見るたびに、自分の中の「世界を見る目の解像度」がクッキリと上がっていく感覚が味わえます。
アニメ『天幕のジャードゥーガル』の今後の展開を追いかけつつ、大阪・関西万博で興味を持ったトルクメニスタンのことや、同じく中央アジアを題材にした名作漫画『乙嫁語り』など、いろいろなところに興味の枝葉を広げていきたいと思っています!
原作を追っていないので、今後どんな話になるのか、楽しみに追いかけてみようと思います!


