【読書レビュー】松木いっか『日本三國』

みなさん、こんにちは!進学塾ライトアップ、代表の西川です。

 

5/4月まで教室はお休みです。5/5火、5/6水は14時から教室を開けます!

 

​突然ですが、みなさんは、今まさに放送されているアニメ『日本三國』をご覧になっていますか? 私はいつのまにか沼にハマってしまい、気づけば毎週日曜日の夜9時に新しいエピソードが追加されるのを心待ちするようになってしまいました・・・

主人公の三角青輝(みすみあおてる)

核大戦、天災、悪政などから革命が起こり、 文明が崩壊した近未来の日本。 国は三つに分かれ、覇権を争う三国時代に突入した。 しがない地方役人だった三角青輝は「日本再統一」を目指し、 豊富な知識と長けた弁舌でのし上がっていく。 後に奇才軍師と称される男の伝説が、幕を開ける――!

https://www.nipponsangoku.com/(アニメ版のHP)より抜粋

アニメ版のPVはこちら

 

キタニタツヤさんが歌うOPの映像はこちら

 

​私はこれまで、周りの漫画好きたちから「絶対に面白い」「読まないと人生損する」とこの原作マンガを何度も勧められてきました。しかし、なかなか腰を据えて読むまでには至っていなかったのです。ところが、今期始まったアニメ版の第一話を何気なく観た瞬間に、衝撃が走りました。

​「なぜもっと早く読んでいなかったのか」

​そんな後悔と共に、気づけばちょうど電子書籍で『日本三國』の1,2巻を無料で読めるキャンペーン中だったので、一瞬で読み終わり、そうすると今度は続きの3巻以降が猛烈に気になり・・・、本屋に行けば漫画の棚に3巻以降が置かれていないかを探すようになっておりました。・・・しかし私が行った啓文社には当時、その肝心の3巻が売り切れていて、置かれていない!泣

 

その後、たまたま行ったショッピングモールで『日本三國』発見して、既刊7巻を全て大人買いし、購入から1ヶ月も経っていない現在、すでに4周は読み返しています。・・・中毒性が高すぎます。

​なぜ、これほどまでに私は『日本三国』に魅了されてしまったのだろう?

 

今回は、作品の魅力、そしてそこから透けて見える「現代社会への鋭い眼差し」について、じっくりとお伝えしたいと思います。作品の内容に触れますが、作品のネタバレは全くありませんので、安心して読んでください。このブログを読み終える頃には、きっとみなさんも教室の棚にある『日本三国』を手に取りたくて仕方がなくなるはずです。

​おもしろポイントその1:文明崩壊後の日本で描かれる「 ガチの軍記物」

本作の舞台は、今からおよそ100~150年後の日本です。

しかし、 私たちが知る今の日本とはかけ離れています。

核戦争、行き過ぎた悪政、 猛威を振るったウイルスのパンデミック、 そして追い打ちをかけるような自然災害。これらによって文明が一度崩壊し、人口が激減した「近未来」 の物語です。

​面白いのは、「近未来なのに、暮らしは戦国〜明治時代まで退化している」という設定です。

作中には、今の私たちが持っているようなスマホもなければ、 戦闘機も核兵器も登場しません。戦争によって荒廃した日本には電力を発電するような施設が無くなってしまったのでしょう。

人々は刀を差し、馬に乗り、 火縄銃のような鉄砲を主力武器として戦っています。

「未来なのに戦国時代??そんな訳ないじゃん!」 と思ったそこのアナタ!そうとも言い切れませんよ。

ウィキペディア情報ですが、天才物理学者のアインシュタインは、「もし第三次世界大戦が起こったらどのような兵器が使われると思いますか?」というインタビューを受けた際に、

「第三次世界大戦は分かりませんが、第四次世界大戦なら分かります。石とこん棒です。」

と答えたそうです。

第三次世界大戦により全世界が壊滅的な打撃を受けた結果、次に戦争が起こるころには世界の文明が退化してしまっているだろうという「予言」をアインシュタインがしているんです。そういう意味でも、この作中の世界観には説得力があります。

そしてこの退化した文明というの設定が、作品に凄まじい「リアリティ」を与えています

私たちは歴史の教科書で、 信長や秀吉がどう戦ったかを知っていますよね。本作を読んでいると、その史実に基づいた戦争の泥臭さ、 戦略の重要性がひしひしと伝わってくるのです。

​特に、作中でたびたび引用される『孫子の兵法』などの古典の使い方が秀逸です。

単なる知識の披露ではなく、劣勢を覆すための「必然」 として兵法が機能しています。

三国志の時代の戦いを見ているような、 それでいて私たちの地続きの未来を見ているような、 不思議な没入感があります。過去の中国や日本の歴史に詳しい人なら、その戦術の妙に、 思わず膝を打つことでしょう。

​おもしろポイントその2:善悪では割り切れない「 多面的な正義」

私が最も感銘を受けたのは、作中に登場する戦争を「勧善懲悪」(良い方が悪い方を懲らしめる)で描いておらず、もっと複雑な点です。

この作品は常に、戦う双方の国の言い分、 そしてリーダーたちの葛藤を克明に描き出します。暴君と思われるような国の指導者たちにも、一定の共感が出来るように作られています。

​このブログを書いている時点で、 ロシアとウクライナの争いが始まってから5年という月日が流れて います。

ウクライナ側から見れば、当然ロシアは一方的な侵略者です。しかし、ロシア側には「ウクライナ国内の クリミア半島に住むロシア人の同胞たちが迫害されている」という、 彼らなりの(たとえそれが形だけの大義名分だとしても) 言い分があります。

​『日本三國』の作中でも、戦争の火種は常に「双方の正義」 のぶつかり合いです。

時には、戦争を始めるための口実として、 事実を捏造してまで国民を煽る場面すらあります。これは決して物語の中だけの話ではありません。

​特に考えさせられるのは、「リーダーとしての決断」です。

​ボロボロになっても、領土を守るために戦争を継続する道

​これ以上の犠牲を出さないために、 プライドを捨てて降伏する道。

​果たして、どちらが国民にとっての「幸福」なのでしょうか?

ある時は「国民を引っ張る、勇猛果敢で理想的なリーダー」だったとしても、のちの時代に振り返ってみると、その評価は「国民を戦争に駆り立てた戦争犯罪人」となっているかもしれません。

現実の世界ではウクライナのゼレンスキー大統領は戦争継続を選択しました。しかし、もし早々に降伏していれば多くの若者の命は救われたかもしれませ ん。一方で、もしも降伏していればさらなる不当な要求を飲まされ、 より過酷な生活が待っていたかもしれません。どちらも苦しい判断です。

そして当然、​「100%正しい決断」など、 政治の世界には存在しません。

今の日本の政治を見ていても、誰かを救う政策が、 別の誰かを不幸にしているという現実は常にあるものです。

長期政権が誕生すれば、システムは安定しますが、 得をする人間が固定化され、 損をする人は損をし続けることになります。それは利益を享受できない側からすれば、既得権益であり、政治の腐敗に写ります。

そんな政治の「ままならなさ」を、この作品は真正面から突きつけてくるのです。

​おもしろポイントその3:若者言葉が「伝統芸能」化したシュールな世界観

重厚な政治ドラマの一方で、 本作には思わず吹き出してしまうようなユーモアが散りばめられて います。それが、「現代のスラングが定着した未来」という設定です。

​文明が一度途絶え、再編されたこの世界では、 私たちが今使っている「若者言葉」が、なぜか「一般的な言葉」 や「格式ある言葉」として継承されてしまっています。

​想像してみてください。

一国の重鎮であるお年寄りが、 国の存亡をかけたシリアスな軍議の場で、真顔で「 ワンチャン(1チャンス、可能性はある)」と口にする姿を

あるいは、歴史に名を残すような偉人を「〇〇ニキ(アニキ)」と呼び、 愛着があるのかないのか分からない文脈でネットスラングを連発する様子を

​「舐めプ」(舐めたプレイ、おそらくゲーム業界のスラングで格下の相手に対して手加減したプレイをすることに由来)

​「ニキ」、​「ネキ」(ネットスラングで、「アニキ」「アネキ」のアがとれた言い方。西川先生のことを西川ニキとか、高市首相のことを高市ネキと呼ぶ感じ)

​これらの言葉が、あたかも辞書に載っている一般的な言葉かのように大真面目な場面で使われます。

この凄まじい違和感こそが、読んでいるうちにクセになってきます。

シリアスなシーンであればあるほど、この言語のズレがシュールな笑いを生み、作品独自の唯一無二の空気感を作っているのです。

​おもしろポイントその4:主人公・三角青輝の「知略」の美学

そして、この物語を牽引するのが、主人公の三角青輝(みすみ あおてる)です。

彼は、いわゆる「無双系」の主人公ではありません。剣術に長けているわけでも、超能力を持っているわけでもありません。

​彼の武器は、圧倒的な「読書量」と、そこから得た「知識」、そして人心を掌握する「弁舌」です。

​ナレーションでは、彼がいずれ「天才軍師」として名を馳せることが示唆されています。

武力で蹂躙するのではなく、言葉で説得し、論理で相手を追い詰め、最小限の犠牲で最高の結果を導き出す。そのプロセスがとにかく爽快なのです

​「力こそ正義」という荒廃した世界において、知識と熱い志だけで世の中を変えていこうとする青輝の姿は、情報過多で何が正しいか分からなくなっている現代を生きる私たち にとって、一筋の希望のように映ります。

​結びに:今こそ「日本三国」を手に取るべき理由

​『日本三国』は、単なるエンターテインメント作品ではありません。

私たちが生きる「今」の政治、言葉、そして人間関係を映し出す鏡のような作品です。

​アニメから入るのもいいでしょう。

しかし、あの圧倒的な熱量と、細部まで描き込まれた軍議の駆け引きを存分に味わうなら、ぜひ漫画版を読んでみてください。現在7巻まで発売されております。

1巻あたりの情報量がとても多いので、一気に読み進めるにはちょっとしんどいですが、多すぎて、もうついていけない!とまではいかない絶妙なボリュームです。

​幸いなことに、教室の棚にはすでに『日本三国』 が置かれています。興味を持った人は、ぜひ1巻を手に取ってみてくださいね。読み始めた瞬間、あなたも私と同じように、気づけば4周目のページをめくっているかもしれませんよ?

​政治の難しさ、言葉の面白さ、そして人間が持つ知恵の可能性。

中学生のみなさんには少し難しい部分もあるかもしれませんが、それらすべてが詰まったこの「日本三国」という物語を、 一人でも多くの人と語り合える日を楽しみにしています!

※マンガ第1巻はこちら

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