【読書レビュー】売野機子『ありす、宇宙(どこ)までも』
みなさん、こんにちは!進学塾ライトアップ、代表の西川です。
6/8日は中高進学フェアです。外部の方は教育ネット21のホームページからお申込みが出来ます!小学生対象の第1部、中学生対象の第3部はまだ空きがあるようなので、ぜひお申込みください!
さて、先日「マンガ大賞2025」の発表がありました。私は普段あまりマンガの賞などは気にしないのですが、私が個人的に大好きな『図書館の大魔術師』というマンガがノミネートしているということで、ひそかに大賞をとるのではないかと期待しておりました。
ところが結果は残念ながら4位・・・(ちなみに先日紹介した死にプロは6位!)ということで、残念ではあったものの、「じゃあ、『図書館の大魔術師』を差し置いて大賞をとるなんて、どんだけおもろいねん!」と、ちょっと斜に構えて、大賞をとった作品の情報を集めました。すると、とても感動する素晴らしい作品だとあちこちで言われており、気になって買って読んでしまいました。
結果、・・・中学生の皆さんにもめちゃくちゃおすすめしたい、素晴らしい作品だということが分かりましたので、ぜひこちらで紹介させてください!
売野機子『ありす、宇宙(どこ)までも』
目指せ!日本人初・女性宇宙飛行士コマンダー !!
容姿端麗で人気者だが、言葉が拙く日々の授業にもついていけない女子中学生・朝日田ありす。
彼女が出会ったのは、孤高の天才・犬星くんで…?
「おれが君を賢くする。」
一人の少女が日本人初の女性宇宙飛行士船長になるまでの物語――https://bigcomics.jp/series/58c38a725ae1c より引用
第1巻のリンクはこちら
第2巻のリンクはこちら
第3巻のリンクはこちら
第4巻のリンクはこちら
まず、タイトルがおしゃれですよね。「宇宙」を「どこ」と読ませるわけです。気になるけどさすがに買うまでは・・・という方は、ビッグコミックスのサイトで数話お試しで読めますので、そちらを見ていただいても良いかと思います。
物語の冒頭は、とある女性宇宙飛行士の方のインタビューから始まります。そのインタビューを受けている女性こそが、この物語の主人公の朝日田ありすです。そしてお話はすぐに彼女の小学校6年生の時代にさかのぼります。当時の彼女は、かわいくて、みんなの人気者で、運動神経は抜群で、両親が事故死してかわいそうで、勉強が苦手なちょっとおバカな女の子・・・だと周りから思われていました。
しかし、彼女がおバカなのには原因がありました。
みなさんは「セミリンガル」という単語を聞いたことがありますか?
英語と日本語のように二か国語を流ちょうに話せる人のことを「バイリンガル」と呼びます。三か国語が話せるなら「トリリンガル」、四か国語なら「クワドリンガル」と呼ばれるのですが、じゃあ「セミリンガル」というのは何か国語が話せる人でしょう?
答えは、0.5です。つまり、どの言語もまともに話せない人のことを言います。
ありすは幼いころから、教育熱心な両親の影響で、海外の学校に留学するなどのバイリンガル教育を受けていました。しかし、両親が事故死してしまったことにより、バイリンガル教育が中途半端なままになってしまい、結果として、日本語も英語も年相応には話せない状態になってしまいました。
ただ、周りの友達は「おバカでかわいい」「かわいいんだからバカなくらいがちょうどいい」「ニコニコしてればいいんだよ」「守ってあげたい」などと好き勝手なことを言います。そんな状況にありすはひっそりと絶望し、苦しんでいました。
「死んでパパとママに会いたい」
「生まれ変わってもう一度やり直したい」
「自分の感情をなんて言ったらいいのか分からない…とにかく『つかれた』」
「『うつくしい』という言葉はみんなが私をバカにするときの言葉だから嫌い」
自分の気持ちを言葉にできないって、本当に苦しいですよね。うちの子は現在2歳半でイヤイヤ期真っ盛りですが、わが子を見ていてもすごく感じます。イライラしていることが言葉にできないから、物を投げたり、噛みついたり、寝そべって足をジタバタさせたり・・・イヤイヤしているときは、この子なりに言葉にできないストレスを抱えているんだろうなと感じます。
そんなありすが、卒業式前日の大掃除でたまたま割り当てれらたのは校長室。その掃除当番の最中に、隣のクラスの変人に見つかってしまいます。その変人こそが、犬星類という勉強大好きな天才少年であり、運命の出会いになります。
2人の最初の出会いは最悪・・・なんですが、ありすはそれすらも気づいていません。ありすとの会話が成り立たない同級生に対して、犬星くんが冷たく言い放ちます。
「そいつはバカなだけだよ。だって面白がらそうとして言ったんじゃなくて、真剣に言ってるじゃん。」
そんなひどい言葉をかけた犬星くんですが、彼女と話をした結果、気になって一晩調べて、彼女が「セミリンガル」であることを見抜きます。そして卒業式当日に彼女に話しかけます。
「君はバカじゃないかもしれないってこと!つまり、なんにでもなれるって言ってるんだ。」
それを聞いたありすの一言が・・・
「生まれ直さなくても、いいってこと……?」
ここまでが第一話です。そして、私はこの時点でかなり泣きました。上のリンクからだと、第一話は登録なしでも無料で読めますので、ぜひ気になった方は読んでみてください!
そこから、現在は第3巻まで発売されていて、もうすぐ第4巻が発売されますが、犬星くんが『親ガチャ』と言われる言葉に負けずに頑張っている話も素敵だし、ありすが宇宙飛行士ワークショップに参加して優秀な周りの子たちに圧倒されながらも、最後にあっと驚く展開になるところも見事です。
ありすももちろん素晴らしい子なんですが、犬星くんがとにかくいいんですよね。犬星くんと彼の(育ての)父親との関係がステキです。(と、ちょっとだけ匂わせておきます。笑)
宇宙飛行士を目指すお話としては『宇宙兄弟』がかなり有名ですが、またそれとは違った視点で語られています。宇宙飛行士としての適性のお話が出てきたり、宇宙飛行士を地上からサポートするスタッフのお話が出てきたり、つくばや種子島など宇宙に関連した実際の地名やイベントが出てきたり、人が言葉を覚えていく過程のお話が出てきたりして、色々な情報を与えてくれます。
宇宙に興味がある人も、それほど興味はないけれどとにかく面白い話を読みたいという人にもおすすめです。
ぜひみんなでこのお話の面白さを語り合いましょう!
(あと、図書館の大魔術師もめちゃくちゃ面白いし、とにかく画が圧倒的に美しいので、そちらもぜひファンになってください!笑)