【読書レビュー】宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』

みなさん、こんにちは!進学塾ライトアップ、代表の西川です。

3/9日はお休みです。3/10月は高校の合格発表日のため、13~18時で教室で待機しております。

新中1準備講座がいよいよ始まりましたが、今までにないすごいことが起こっています。

・・・なんと、授業後に塾に残って勉強して、それから毎日自習に来てくれる生徒さんがいるんです。まだ小6ですが、すごいやる気を感じて嬉しくなります! もちろん勉強も出来るようになってほしいのですが、まだ中学生になっていない今だからこそ出来ることもきっとあると思うので、勉強だけでなく、教室にあるマンガやボードゲームなど色々紹介して、色々なことを学んで、興味のアンテナを色々なところに張っていってほしいなと思っています。

さて、後回しになってしまっていますが、今通ってくれている生徒さんたちに以前受けてもらった模試結果や、学年末のテスト結果ももうすぐこちらで紹介させてもらいたいと思っていますので、少しお待ちください!

今回は、久しぶりの読書レビューです。受験期ということを言い訳にしばらく本を読むのもお休みになっていましたが、やっぱり普段から本を読んでいないとだめですね。そして運動もしないとダメ。時間の使い方をもう少し改善していきたいなと反省をしております。

以前中3の生徒さんに英数学館で受けてもらった、そっくり模試という模擬試験を紹介したブログで、人気の小説からの出題があったというお話をさせてもらいました。

【教室内紹介】12/8の中3そっくり模試&12/7、12/10の中3コメント返信

そして面白そうな本だったから教室に置きたい!という話をさせてもらっていて、実はすぐに教室には置かせてもらっていたのですが、私自身は読んでいませんでした。ですが、受験が終わって私もようやく手に取って本を読むことが出来ました!

宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』

2024年本屋大賞を始めとして18個もの賞を受賞した、大人気作品ですね!

発行部数100万部突破ということで特設サイトもあります。

かつてなく最高の主人公、現る!

「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」。

中2の夏休みの始まりに、幼馴染の成瀬がまた変なことを言い出した。コロナ禍、閉店を控える西武大津店に毎日通い、中継に映るというのだが……。さらにはM-1に挑み、実験のため坊主頭にし、二百歳まで生きると堂々宣言。今日も全力で我が道を突き進む成瀬から、誰もが目を離せない! 話題沸騰、圧巻のデビュー作。

https://www.shinchosha.co.jp/special/naruten/ より引用

この作品のことを一言で言えば、主人公の成瀬あかりと彼女を取り巻く人々の6つのエピソードを並べた短編集です。

作中で、成瀬は中2から高3まで成長していくのですが、中2のころのエピソードが「ありがとう西武大津店」「膳所から来ました」の2つで、これは成瀬をひそかに応援している幼馴染の島崎の視点から語られています。続いて、毎日テレビに映り込む成瀬をひっそりとSNS上で応援していた、とあるおじさんのサイドストーリーが「階段は走らない」、そして成瀬が高校生になってからのエピソードが「線がつながる」「レッツゴーミシガン」「ときめき江州音頭」の3つです。この3つはそれぞれ視点が違っていて、成瀬のことが苦手な同級生の大貫さん、成瀬に一目ぼれした広島の高校生の西浦くん、そしてちょっとしたことからスランプに陥ってしまった成瀬本人の視点から描かれています。

1つ1つのお話はそこまで長くないので、長編小説を読み慣れていない人にもおすすめですし、今この本を貸し出している新中1の生徒さんも読みやすいと言ってくれていたので、中学生にも十分に楽しめる作品なのではないかと思います。それぞれの短編を読み終わるのには30分もかからないと思います。

そして、感動して泣けるというよりは、まっすぐな成瀬を応援したくなるような作品だと思います。

この作品がどうしてこんなに世間で話題になっているのか、その理由は・・・実際のところは私にもわかりませんが、やはり成瀬というキャラクターの魅力が大きいのだと思います。

私なりに考えた彼女の魅力は次の4つです。

①確固たる自分を持っている

幼馴染の島崎に、「成瀬あかり史を見届けたい」と言われるくらいには、個性的な性格です。あらすじにもありますが、近所のデパートの閉店カウントダウンを地元のテレビ局が毎日特集しているのを見て(広島で言えば「いまナマ」とか「満点ママ」が特集している感じ?でしょうかね笑)、毎日テレビに映り込もうと決めたり、M-1というお笑いコンテストに出場しようと決めてネタを考えたりします。さらには、200歳まで生きるために色々なことに挑戦したり逆に慎重になったり、高校入学に合わせて、とある実験のために髪を丸坊主にしたり、周りから孤立しても自分の意志を曲げなかったりします。そんな自分の信じた道を行く強い信念を持っています。そこに読者は自分にはない魅力を感じ、憧れを感じるのではないかと思います。

②発想力と実行力のバケモノ!

これは1つ目と少し内容がダブってしまうと思いますが、これをしたいという発想力と、それを実行するまでのスピードがものすごいと思います。以前このブログでも、勉強が出来る子は、こちらが話した内容にすぐにリアクションをしてくれるという話をしたことがあると思うのですが、実際に成瀬さんは頭も良いんでしょう。進学先の高校は滋賀県のトップ校膳所高校なんですよね。(もちろん、成瀬さんはフィクションですが)

M-1に出るというのも、きっかけはM-1に出ている芸人さんが面白かったからなのですが、面白かったからといって一般人、しかも中学生がM-1に出場しよう、とまではなかなかなりませんよね?

M-1とは別のお話ですが、東京大学を見学する・・・ということを口実に、こっそり大学を抜け出して、自分のとある野望のためにある場所を「視察」に行くんですよね。そんな風に、これをやろうと思ったことを即実行する行動力も、読者には魅力的に映るのではないかと思います。

そして、読者の方のレビューを見ていると、ここまでの成瀬の行動を見ていて、「涼宮ハルヒと似ている」という意見がありました。

私が高校生か大学生くらいのときに、ラノベ原作のアニメで「涼宮ハルヒの憂鬱」という作品が話題になっておりました。自分の人生を面白くしたいからという理由で、真剣に宇宙人や未来人や超能力者を探している涼宮ハルヒという女の子が主人公です。毎日、真剣にUFOを呼んだり、自分を主人公にした映画を作ったり、周りには変わり者だと思われながらも、彼女なりに必死に頑張っています。

そんな彼女の周りには、実は宇宙人も未来人も超能力者も集まっていたけれど、彼女が気づいていなかっただけで、彼女の周りで色々な超常現象が起きる・・・という、そんなあらすじだったかと思います。成瀬は宇宙人を探してはいませんが、自分の人生を面白くしたいという部分は似ている気がしますし、ハルヒに地元愛を足せば、ぐっと成瀬に近づく気がしますので、気になった人はこちらの作品も見てみるといいかもしれません。

③そんな成瀬も弱みをみせるときがある

と、ここまで成瀬ってすごい子!という視点でお話をさせてもらいましたが、最後の「ときめき江州音頭」のところでは、人間味のある成瀬の一面を描いていて、彼女をただの「変人」で終わらせないのが良かったですね。

「ときめき江州音頭」では、とあることに悩む成瀬自身の視点から物語が紡がれていて、勉強のことや人間関係のちょっとしたことに悩む、等身大の高校生の姿があります。決して自分の意思を曲げない、・・・ように見える成瀬にだって悩むことはあるわけです。意思がぶれてしまうことがあるわけです。

そんな彼女に手を差し伸べてくれるのが、それまでの5つの短編に登場したキャラクターたちです。成瀬の人付き合いの方法が、普通の人とは違う方法だったとしても、彼女なりに誠実に真剣に向き合ってきたんです。それによって作られた人間関係が、最終的に彼女にどんな影響を与えるのか、この部分はぜひ皆さんが作品を読んで確かめてみてください!

④地元愛がステキ!

そして、この作品の最大の魅力の1つが成瀬の地元愛です。西武大津店、膳所、琵琶湖、観光船ミシガン、ときめき夏祭り・・・彼女の地元の愛し方が半端ないし、愛され方も半端ないんです! 私自身、滋賀には滋賀医科大学に通う同級生を訪ねて、一度訪れただけです。その時に真っ暗な琵琶湖のほとりで「これ海じゃないのか!?」という感想を持った記憶はかすかにあります。ですが、この作品を読むだけで、滋賀に興味が湧いてきました。笑

そして、地元を愛し、地元に愛されることって大切だなと改めて感じました。フィクションではあるのですが、「地元」という柱があるからこそ、成瀬あかりの豊かな人間性が育まれたのかな、なんてことも考えました。

ここから話は小説から逸れてしまいますが、尾道から出ていく人が多い、広島県から出ていく人が多い、いわゆる「転出超過」というのが、私たちの地元の問題の1つとしてあります。そんな問題がちらつくからこそ、作品を読んでいて、こんな風に地元を愛している子の存在って、その地元にとってはめちゃくたい大切な財産だよな・・・なんて思ってしまいました。

私もブログで、あっちこっち尾道というカテゴリーで地元紹介を書かせてもらうことがあります。めちゃくちゃ不定期で最近はあまり出せていないカテゴリーの記事がありますが、その重要性を再認識しました。もっと発信しないと!笑

ということで、突然問いかけますが、このブログを読んでくださっている大人の皆さんは、子供たちに自分たちが住んでいる町の魅力や、子供が通っている学校の魅力をきちんと伝えられているでしょうか?

ちょっとしたことでもいいんだと思います。実際、私自身は中3のときに担任だった先生から言われた「尾道って実はめっちゃいい街なんよ。」という言葉がすごく頭の中に残っていて、もしかしたらこうやって地元に帰ってきたのも、その言葉が理由の1つだったのかもしれません。担任は体育教師で、東京にある日本体育大学というところで、バレーを専門にやっていた先生だったのですが、「尾道は気候もいいし、雪や雨の被害も少ないし、景色も良いし、歴史もある」ということを卒業式だか、その少し前だか、そのくらいの時期に帰りのホームルームで話してくれました。それもあって、私は大学時代も社会人になってからも、色んな人を尾道に呼んで一緒に観光しました。生徒にも「こんな地元って、なかなかないよ?」という話を折を見て話すようにしています。

そして、スケールはさらに小さくなりますが、作品を読みながら、・・・尾道北のことも考えました。

なんであんなに定員割れを起こすんだろう? あれから色々と尾道北に通っている生徒さんに聞いたりもしました。冬に実施するハーフマラソンが微妙なんじゃないかという話も出ました。たしかにそれは大変そうだなとは思いましたが、体育がしんどいから学校を辞める、高校の人気がなくなるっていうのは、私にはあまりピンとこないんですよね。

私はそれ以外に、以前のブログでも書きましたが、やっぱり尾道北のことを悪く言う人が多いんじゃないかということも考えました。

「課題が多いよね」(最近は尾道東の方が校則も厳しいし課題も多いという話を聞きますよ?)

「なんちゃって進学校だよね?」(近隣で尾道北以上の進学実績を出しているのは、広大福山と県立広島くらいですが、それではダメですか?ほぼ毎年定員割れ状態からそこまでの実績を出すのってすごくない?)

「部活を楽しめなさそう」(伝聞なので間違っていたら訂正しますが、今年、某最難関国立大学を受験した高3の生徒さんは、運動部を最後の引退までやりきったそうですよ?)

「先生の質が悪い」(国立大学に向けて毎日英作文を添削してくださる先生がいらっしゃったり、どの大学ならどのくらいの記述量を目指すと良いという、データに基づく指導をしてくれる数学の先生がいらっしゃると聞きます。普通にすごくないですか? 塾いります? 学校の課題をしっかりとやればよくないですか?)

日本は謙遜の文化ですからね。あまり自分で自分のことを良くは言わないです。それに輪をかけて、周りが自分の所属する学校のことをディスっていると、胸を張ってこの学校が好きって言えないんじゃないかな、なんて考えたりもしました。自分の母校のことを好きって言えないのって、少し悲しいことだと思うんです。

我々塾講師は生徒に塾が必要だと思ってもらいたいですから、自分たちの価値を高めるために相対的に学校の価値を下げるというのは、そんなつもりはない私であっても、もしかしたらあまり意識せずについついやってしまっているかもしれません。ただ、そうすることで子供たちの自己肯定感が下がってしまうのであれば、それはあまり良くないことのような気がしています。

このブログを読んでくださっている皆さんが、学校のことを目いっぱいほめる、地元のことを目いっぱいほめる。子供のことだけではなく、その子供が所属しているコミュニティーをほめてあげる、そのコミュニティーの価値を上げてあげる。そういったことが、我々大人には大切なのかもしれない。そうすることで、地元や学校を愛し、地元や学校に愛され、唯一無二の個性を発揮する「尾道の成瀬」が生まれるかも?

・・・というのは、さすがに飛躍しすぎですかね?

ということで、軽い気持ちで書き始めたつもりだったのですが、気づけば原稿用紙15枚近くの読書感想文が出来上がってしまいました。(いつも長文駄文をダラダラと・・・すいません!)

続編、『成瀬は信じた道をいく』の方は、ひっそりと読破しておこうと思っております。

購入して教室に置いているのに、まだきちんとレビューが出来ていない作品が実はまだまだたくさんありますので、こうやって少しずつリリースしていきたいと思っています。気長にお待ちください!

そして、生徒の皆さんもぜひ、気になる作品があれば教えてください!

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