【ニュースで知ろう!】「円安は輸出に有利」は時代遅れ?

みなさん、こんにちは!進学塾ライトアップ、代表の西川です。

月曜日は体育祭の振替休日で学校がお休みという生徒さんも多かったため、試験勉強に使ってほしくて教室を開けておりました。良いスタートを切ってくれた生徒さんも多いので、期末試験の結果も非常に楽しみです!

さて、本日は中3社会、公民のお話です。気づけば6,000字を超える、そこそこ長い記事になってしまいました。

この記事を書き始めたのは5/12からで、そこからちょこちょこと書いておりました。書くのに使った時間は・・・ざっと4、5時間くらいでしょうか。ですので、少しずつでも読んでいただけると幸いです。

そもそも、円高・円安って何だろう?

現在日本はものすごい円安状態です。

・・・って言われているけど、そもそも円安って何?

今回はそんなところからお話をしていきたいと思っています。

私も円高・円安というのをきちんと理解したのは、中学生のときでも高校生のときでもありません。私が大学生の時に、学生ディベートのお題で経済関係のテーマが出された時でした。

まずは、その時に参考にさせてもらった本を紹介したいと思います。

予備校講師の細野さんの本がとても分かりやすかったです。かなり前の本なので、ブック〇フなどでも売られていると思いますし、塾にも私が当時買った本があります。気になった方、経済について基礎から勉強したい方は読んでみてください。

ちなみに、細野さんは高校数学の参考書も出していて、「確率」の本は、私が現役時代にお世話になった名著です。

『細野真宏の経済のニュースがよくわかる本 日本経済編』p.2-3

話を戻しまして、細野さんの経済本の書き出しはこんな感じです。ここから先は引用しませんが、このページを見てもらっただけでも、中学生でも経済の仕組みが十分に理解が出来るように、分かりやすくかみくだいて書かれていることがよくわかると思います!

まず日本で使われているお金の単位は「円」ですが、これをこのままアメリカに持って行っても使えません。なぜなら、アメリカで使われているお金の単位は「ドル($)」だからです。

そこで、日本とアメリカで貿易をしたり、旅行に行ったり、海外の商品を通販サイトなどで買うときには、円とドルを交換しなければなりません。このようにお金同士を交換することを「為替(かわせ)」と呼びます。ここテストに出ます!

この交換ですが、いつも同じ金額ではないんです。1ドル=100円のときもあれば、1ドル=120円、1ドル=90円のときもあり、その比率(為替レート)は常に変動しています。どうして金額が変わるかというと、そこには色々な理由がありますが、簡単に言うと、「みんなが欲しいと思ったお金は価値が上がり、みんながいらないと思ったお金は価値が下がる」ということです。

みんなが欲しいと思うものは価値が上がります。最近はプレイステーション5やニンテンドースイッチや限定販売の商品など、人気の商品を買い占めて、それを通常の値段よりも高く売る「転売」というものがニュースになっています。そんな風にみんなが欲しい、少し値段が高くても買いたいと思うものは、どんどん値段が高くなっていきます。

逆に、みんながその値段だと買いたくないと思っているものは、値下げや割引をされて安くなっていきますね。スーパーに行くと高いお肉やお刺身が、時間が経って安くなっているのを想像すれば分かると思います。そのように、みんなが欲しくないものの値段は安くなっていきます。

「為替」でも同じことが起こります。例えば、今戦争をしていて、もうすぐ滅んでしまうかもしれない国があったとします。みなさんがその国のお金を持っていたとすると、すぐに他の国のお金と交換したくなりませんか? だってその国が無くなってしまえば、その国のお金はただの紙切れ・金属のかたまりになってしまいますから。

そんな極端なことが起こらなくても、ある国の大企業がつぶれたとか、ある国の政府が〇〇という政策を行ったとか、ある国の選挙で政権交代が起こったとか、そんな出来事でどんどんお金の価値が変わっていきます。

そして、この円安・円高というのは、「貿易」に大きく影響します。

分かりやすくするために「1ドル=100円」「1ドル=50円」「1ドル=200円」という(実際にはありえない)状態を例にとって、話をしてみます。

「1ドル=100円」という状態から「1ドル=50円」になることを「円高」と言います。100円が50円になったんなら、安くなっているから円安なんじゃないの?と思うかもしれませんが、違います! 「今まで100円出さないと1ドルをくれなかったのに、50円で1ドルを交換してくれるようになった」・・・ということは、円の価値が上がった(=円高)ということです。

そして、その反対が「円安」です。「今までは100円払えば1ドルと交換してくれていたのに、200円払わないと1ドルと交換してくれなくなった」・・・ということは円の価値が下がってしまった(=円安)ということです。

そして、一般的には「円高」は「輸入に有利、輸出に不利」、「円安」は「輸出に有利、輸入に不利」と言われます。

例えば、日本で1,000円で売られているものを海外に売る場合を考えてみましょう。1,000円の商品は・・・

「1ドル=100円」なら10ドルで売れますが、

「1ドル=50円」(円高)なら20ドルになり、

「1ドル=200円」(円安)なら5ドルになります。

海外の人からしたら、同じ商品なら、安いときにたくさん買いたいですよね?

だから円安のときの方が日本の商品がたくさん売れるので、売る側の日本の会社にとっては、円安の方がありがたいわけですね。

例えば、海外で100ドルで売られているものを買う場合・・・

「1ドル=100円」なら10,000円で買えますが、

「1ドル=50円」(円高)なら5,000円になり、

「1ドル=200円」(円安)なら20,000円になります。

日本人からしたら、同じ商品なら、安いときには買いたい人が増えて、高いときは「高すぎるから我慢しようか・・・」となる人が増えそうですよね?

だから、円高の時は少し安く商品が買えます。実際に円高だったときには、スーパーなどで「円高還元」などと言われ、海外の高級ブランドの商品が少し安く売られていることもありました。私たち買う側の日本人にとっては、円高の方がありがたいわけですね。

まとめますと、

「円高」「円安」のまとめ

・円高…「1ドル=100円」から「1ドル=50円」になるように、円の価値が上がること。「輸入に有利、輸出に不利」

・円安…「1ドル=100円」から「1ドル=200円」になるように、円の価値が下がること。「輸出に有利、輸入に不利」

・・・ということで、簡単な円安・円高の仕組みの授業は終了!

ここまでの内容が頭に入って来なかった人は、下の動画でも見ておいてください!

今、どうして円安が起こっているの?

さて、ここからは本題にいきたいと思います。

今、ものすごい「円安ドル高」が起こっています。今までは「1ドル=110~115円」という状態だったものが、つい最近のニュースによると、「1ドル=135円」となっています。ここからも更に円安が進み、140円台になるだろうと予測ている経済学者の人もいるようです。要するに、今は、みんなが円を手放したがっていて、ドルを手に入れたがっているということです。

では、なぜ円安が起こっているのでしょうか?

気になって調べてみると、この円安にはアメリカの金利政策が関係しているという記事を見つけました。

なぜ円安が進んでいるの?20年ぶり水準、家計に負担も

https://news.yahoo.co.jp/articles/e0512fe00af3affb5c2348bb435afa2f66d5dc73

外国為替市場で円安・ドル高が急速に進んでいる。3月から5月初めにかけてのわずか2カ月間で円はドルに対し16円も下落、約20年ぶりの水準となる1ドル=131円台を記録した。急速な円安は家計への負担にもなりかねない。

 ―なぜ円安・ドル高が進むのか。

 日米の金融政策の違いが明確になったことが大きい。日本では日銀が大規模な金融緩和を続け、企業の借り入れや住宅ローン金利の指標となる長期金利を低く抑え込んでいる。一方の米国は歴史的なインフレを抑え込むために金融引き締めにかじを切っており、金利上昇が続く。このため日米の金利差が拡大し、より金利の高いドルで資産運用をしようと円を売ってドルを買う動きが強まっている。

https://news.yahoo.co.jp/articles/e0512fe00af3affb5c2348bb435afa2f66d5dc73 より引用

このニュース記事によると、今アメリカの銀行の金利が高い。

だから、自分の国のお金をドルに換えて、アメリカの銀行に預けておいた方がお得になる。それで、世界中の人が自国のお金をドルに交換しているということです。

そもそも「金利」って何?となるかもしれませんので、こちらも簡単に説明しておきます。

借りたものは返さなければいけません。当たり前ですね。そして返すときには、「貸してくれてありがとう」ということで、借りていた額よりも、少し多めにお金を返します。この多めに返すお金のことを「利子」、利子がどれくらいになるのかを%を使って表したものを「金利」といったり「利子率(利率)」といったりします。

もしも銀行から「借金」をする場合には、きちんと「利子」を含めて返さなければいけません。「借金」と言うと少し印象が悪くなるかもしれませんが、何か新しいことを始めるために一時的に銀行からお金を借りるというのは、会社には珍しくないことなんです。(『半沢直樹』というドラマは、それに関連していますね。)

金利が高いということは、お金を預けている人からすると、とてもお得です。

銀行にお金を預けるというのは「銀行にお金を貸している」状態になるので、それだけで利子がもられます。アメリカではその金利がどんどん上がっているので、預けているだけでお金がもらえるなら、アメリカのドルを持っておきたいな、という人が増えているんですね。

そうするとここで少し気になることがあります。

「円安は『輸出に有利、輸入に不利』と言われていたけれど、今はどんな状態なんですか? 輸出はいい感じなんですか?輸入は大変なんですか?」

ということです。詳しいことは私も勉強不足で分からない部分があるのですが、今の様子を見ていると、どうやら「輸出は大して良くなっていなさそう、そして、輸入は本当に大変そう。」・・・つまり最悪の状態なんですよね。そちらの解説をしてくれているのが、何度も引用させてもらっている中田さんのYouTubeです。

「円安は輸出企業に有利と言われているけれど、日本の企業の工場はすでに海外に移転しているため、円安で企業が得られる利益はあまりない。逆に、輸入する企業の原料が高くなってしまうので、その原料費の値段が上がってしまう悪い影響の方が大きい。」

「ロシアのウクライナ侵攻の影響で、石油や小麦の値段が値上がりしているし、新型コロナの自粛が世界では次々に解除されて、みんなが経済活動をするようになった影響で、商品全般の値段が上がり始めた。この世界的な値上がりムードの上に、日本は更に円安によって、海外から輸入されたものの値段が上がる。けれど、日本で働いている人のお給料は大して上がっていない。だから、家庭の負担がどんどん増えていってしまう・・・」

「日本では、100均のような安いお店が人気だが、その商品のほとんどが海外から輸入されたもの。だから、このまま円安が続けば、100均のような、輸入品の安さを売りにする業界は深刻なダメージを受ける。」

このように感じている人がどうやら多いようです。

もちろん、この見方が絶対に正しいのかと言われると、それは後になってみないと分かりません。

円安で一時的にダメージを受けているように見えるけれど、ここからどんどん輸出が好調になっていくという、「Jカーブ効果」を主張をしている方もいますし、それを踏まえた上で、その「Jカーブ効果」が今回の円安には当てはまらないと主張している人もいます。

とにかく、私が自分でも調べてみて印象的だったのは、「円安は輸出に有利」という、毎年教えている仕組みが、今の日本にはもはや当てはまらないかもしれない、ということでした。

『新しい社会 公民』(東京書籍)p.160より引用
『新しい社会 公民』(東京書籍)p.161より引用

この公民の教科書は去年改訂されたばかりのものです。それがたったの1年しか経っていないのに、もしかしたら今の日本の実際の状況とは異なっているかもしれない・・・。これは教科書が悪い訳ではありません。それくらい今の世の中は、どんどん変化していってるということです。

教える側も、古い知識を使いまわすのではなくて、常に新しいものにアップデートしていかなければならない。大変ですが、私も出来る限り誠実に、みなさんにきちんとした知識を教えていきたいと思っていますので、自分が興味が持ったところからではありますが、少しずつアップデートしていきます。

ということで、ちょっと小難しい経済のお話しでした。大人になってみると分かりますが、お金は本当に本当に大事です。こういう話に中学生のうちから興味を持ってくれる子は、きっと将来大人になってから、資産運用などが上手く出来るんじゃないかと思います。

お金の話は、ご家族で色々と話してみるのも面白いと思います。

「大人はこんな税金を支払わないといけないんよ」とか「円安になってガソリンがこれだけ上がって、そうすると年間でこれだけ余計にお金を払わないといけなくなるかも・・・」とか「コーヒーも100均もパンもこれだけ値上がりしとって・・・」といったお話しですね。

やっぱり生々しい話を聞いて、印象に残ってくれるのは大事だと思うんですよね。笑 そうすることで、夏休みの宿題の定番『税の作文』のネタも作れると思いますので、ぜひお願いします!

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